b)研究領域毎の研究活動の内容と水準の質的向上に関する取組(その4)
○ 原子力材料
L ナノ材料科学的手法による高経年化軽水炉の安全確保のための研究を進める。
平成16年度
・国際研究協力協定を結んだベルギー原子力研究所より、入手が非常に困難な(日米では初めて)原子炉圧力容器鋼実機監視試験片を入手し、現実に稼動している原子炉の材料中でどのようなナノ材料過程が起こっているかを明らかにしつつある。
平成17年度
・軽水炉用低炭素オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部材の長時間熱時効による析出 及び偏析挙動をナノプローブEDSを用いて明らかにした。
・コルダーホール型原子炉(日本原電 東海1号炉)の原子炉圧力容器鋼監視試験片では、材料試験炉による加速照射と異なり、不純物銅のナノ析出物(照射促進析出)形成が脆化の原因であることを最新の陽電子消滅法を用いて明らかにした。さらにベルギーDoel-2炉の監視試験片でも、照射初期で銅ナノ析出物が形成していることを示した。
平成18年度
・局所電極型3次元アトムプローブ(LEAP)にレーザー蒸発装置を導入するとともに、新たな陽電子寿命運動量相関装置を開発し、ナノ材料解析法をさらに発展させ、ベルギーDoel-1,-2,-4炉の圧力容器監視試験片などについて原子レベルの解析を進めた。特に、Doel-2炉監視試験片の結晶粒界におけるPやMnなどの偏析やCu析出挙動を明らかにした。
M 核融合炉構造材料の照射下特性予測手法を開発し、材料開発指針を確立する。
平成16年度
・核融合炉構造材料の候補材であるバナジウム合金に種々の条件で中性子照射を行い、透過電子顕微鏡及びアトムプローブを用いて導入された欠陥集合体や析出物の同定を行うとともにマクロな機械的性質への影響を検討した。
平成17年度
・構造材料の機械的特性劣化を原子レベルから解明するため、高分解能電子顕微鏡を用いた素欠陥の一次元運送、電子顕微鏡と第一原理に基づく計算機解析とを結びつけた転位と欠陥との動的相互作用を実験、理論の両面から検討した。
平成18年度
・核融合炉候補材料であるバナジウム基合金の耐スエリング性の向上を目的として、格子間原子の拡散特性を分子動力学法を用いて評価し、実験的に観察されるボイドスエリング挙動との対応を検討した。
N ウラン電池の開発研究と、ネプツニウム化合物の合成とその物性研究を進める。
平成16年度
・水溶液電解法によるネプツニウム金属調製とその単結晶育成とその物性の解明及び電力貯蔵を目的としたウラン・レドックスフロー電池を開発した。
平成17年度
・フラックス法によりPuIn3の純良単結晶育成に成功し、短時間でdHvA効果を測定することで、プルトニウム化合物としては初めてフェルミ面の観測に成功した。
平成18年度
・NpGe3、NpTGa5(T=Rh,Pt,Ni,Fe)、NpO2の電子状態や磁気秩序をdHvA、中性子、NMR、メスバウアー分光で解明した。
また、ウラン電池の活物質のうち安定性が課題となっているウラン(V)、ウラン(III)の錯体について物性化学的検討を行った。
O 照射誘起可視発光体、照射誘起現象を利用したエネルギー変換材料を開発する。
平成16年度
・各種放射線に応答する可視発光体の開発を行い、それらを利用した光計装システムを提案した。また、プロトン伝導体の照射改質に成功した。
平成17年度
・二次元酸化物を含む多様な発光体の発光挙動の解明と高効率発光体の探索を通じて、 中性子、イオン、光量子に対して異なる発光スペクトルを持つ発光体を見出し、発光体による粒子弁別、エネルギー弁別の可能性を提示した。
平成18年度
・プロトン伝導体を用いたエネルギー変換の可能性についてプロトン伝導体の原子炉照射下での電気伝導特性、起電力特性をJRR-3を用いて検討した。プロトン伝導度の大幅な増大が観測される一方、雰囲気に水蒸気を導入(原子炉内で初めての試み)した効果は観測されなかった。
P 原研-サイクル機構、物材機構や欧米原子力研究機関との共同研究を推進する。
平成16年度
・照射技術開発、セラミックス照射高度化に向けて原研−サイクル機構と共同研究を実施した。また、スペインCIEMAT、ベルギーSCK/CEN、フランスCEN、ロシア・オブニンスクと共同研究を実施した。
平成17年度
・JAEAと原子炉JRR-3の材料研究への高度利用に向けた電気・光計装技術開発を行った。フランスCENと光ファイバの照射効果に関する共同研究を実施した。ベルギーSCK/CENと原子炉BR-2を用いた共同照射研究を実施した。
平成18年度
・JAEA統合、JMTR再立ち上げ決定等の状況変化に対応したJAEAとの協力体制の再構築に向けた議論を開始した。照射基地としての大洗COE化構想において大洗センターのナノ構造解析センター、高度材料照射技術開発センターとしての位置付けを明確にした
○以上の研究に基づく論文数
達成度評価資料 研究成果発表DB、論文DB、特許DB、国際共同研究DB
平成16年度 ・以上すべての研究に基づく論文として、700編(平成17年4月1日現在)発表した。
平成17年度 ・以上すべての研究に基づく論文として、787編(平成18年4月1日現在)発表した。
平成18年度 ・以上すべての研究に基づく論文として、787編(平成19年4月1日現在)発表した。
○以上の研究に基づく発明の届出件数を、平成18年度を目標に、平成15年度に比べ20%程度増加させる。
年度計画
16年度 発明の届出件数を、平成15年度に比べ7%程度増加させる。
平成16年度 ・平成15年度54件の届出に対し、平成16年度は60件の届出あり、11.1%増加した。
17年度 発明の届出件数を、平成15年度に比べ14%程度増加させる。
平成17年度 ・平成15年度54件の届出に対し、平成17年度は51件の届出があり、5.6%減少した。
18年度 発明の届出件数を、平成15年度に比べ20%程度増加させる。
平成18年度 ・平成15年度54件の届出に対し、平成18年度は57件の届出があり、5.6%増加した。
19年度 平成18年度の届出件数を維持する。
達成度評価資料 発明の届出および認定状況資料