b)研究領域毎の研究活動の内容と水準の質的向上に関する取組(その3)         

 

   エレクトロニクス材料

 

G 強相関物質での種々の量子相転移とその原理を解明する。

 

平成16年度

・チタン酸化物をベースとする絶縁体酸化物界面に高移動度の2時限電子ガスを形成す る手法を確立した。また酸素欠損超格子による電子物性の制御に初めて成功した。

・酸化物高温超伝導体及び有機化合物超伝導体における渦糸相転移のメカニズムの解明を行った。

・中性子散乱で銅酸化物超伝導体の磁場誘起磁気相関を見出し、超伝導と磁性の相関に関する新たな知見を得た。

平成17年度

La1/3Sr2/3FeO3薄膜をチャネルとする電界効果トランジスタを作製し、電荷整列反 強磁性転移近傍におけるキャリアダイナミクスを明らかにした。

・室温では均一な金属状態を示す強相関有機伝導体κ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Brが、低温では数10マイクロメーターの大きさの金属と絶縁体とに分離混合したマクロ相分離状態になる様子を実空間画像化することに成功した。

平成18年度

SrTiO3LaAlO3の2種類のバンド絶縁体の結晶系をコンビナトリアル合成し、特異な金属状態の発現を確認した。

・高温超伝導材料RE123膜の磁束ピンニング相図において、c軸相関ピンに支配される磁束ピンニング状態が磁場の印加と共に一旦消失したあと不可逆磁場近傍で再び現れるリエントラント現象を発見した。

・銅酸化物超伝導体の超伝導相で、特定の格子振動が特定の空間周期で異常を示す事を中性子散乱実験とX線非弾性散乱実験により発見した。

・典型的な重い電子系として知られるCeB6の希釈合金CexLa1-xB6では、広い範囲の磁場とCe濃度にわたり、

安定した非フェルミ液体が出現することを発見した。

・電流駆動による種々のナノ磁性デバイスの提案を行った。

・強い異方性を持つ層状高温超伝導体において、相に平行な磁場中で磁束が、これまで理論的にのみ予測されていた1次元的な長周期構造を持つスメクティック相を形成していることを発見した。

 

H 新しいセラミックス材料の開発を進める。

 

平成16年度

CoドープTiO2の室温強磁性に伴うスピン編極を実証し、希薄磁性半導体としてのス

ピントロニクスデバイス材料応用への基礎物性を明らかにした。

・新規非鉛系強誘電体、BaTi2O5を発見した。

平成17年度

       ・遷移金属化合物の熱電材料開発理論を構築した。

・新しい高速セラミックス膜作製方法として、レーザーCVD法を提案し、多くの酸化物膜を従来の1001000倍の速度で合成することに成功した。

・新規超硬・耐熱材料として、TiB2-TiCTiB2-SiC二元共晶及びSiC-TiC-TiB2三元共晶セラミックスを開発した。

平成18年度

・民間企業との共同で非鉛圧電素子用材料の第一原理シミュレーション計算による設計・開発を行った。

 

I 3次元磁気超構造を創製し、新規磁気伝導特性を発見する。新規スピンエレクトロニクス材料の開発を進める。

 

平成16年度

・強相関酸化物界面の磁気物性を選択的に検出する方法を開発し、スピントンネル接合の高性能化を導く界面原子層エンジニアリング手法を確立した。

・金属ナノ粒子系におけるスピン依存単一電子トンネル減少を実験的に明らかにし、金属ナノ粒子のスピンエレクトロニクスへの応用に道を拓くとともに、FePt規則合金を用いた高性能ナノ磁石集合体を合成した。

・多面体型の磁性クラスターの研究を推進し、擬反強磁性状態等の新しい磁気状態を見出した。

平成17年度

・磁性ナノ細線を用いたメモリー素子を提案した。

(Ti,Co)O2室温強磁性半導体を用いたスピントンネル接合の作製に成功した。また、この材料の電子構造を第一原理計算と光電子分光により詳細に調べ、CoTit2g電子の混成が重要であることを明らかにした。

・単結晶トンネル障壁層上でFeナノ粒子が自己配列構造を示す手法を見出した。また、8面体型FePtナノ粒子を合成する新規プロセスを発見した。

  スピンカイラリティを利用した新しい磁気記憶原理を明らかにした。

平成18年度

CoドープしたTiO2の磁気輸送特性に、極めて特徴的なスケーリング則を発見し、室温強磁性発現の機構解明に迫った。

・磁気メモリーの高密度化に有用な材料として期待される垂直磁化FePt積層構造膜において、スピン注入によるFePtの磁化反転を実証した。

・一次元強相関物質によるスピン・電荷分離の検証に成功、及びその非線形光学素子の提案

・新規非鉛系強誘電体BaTi205への各種異種元素置換による結晶構造、誘電特性の変化を明らかにした。

 

J 特性向上・機能拡大が可能な半導体結晶の成長技術および高品質な人工結晶材料の研究を実現する。

 

平成16年度

・成長界面への電場の印加により、液相−固相間の相平衡関係の操作が可能であることを非コングルエント性物質のランガサイトを例にとり、理論的解析および実験から証明した。

・酸化亜鉛のp型伝導を可能にする結晶成長技術を確立し、世界で初めて酸化亜鉛青色発光ダイオードを実現した。

・窒化物半導体ならびに酸化物半導体のエピタキシ成長技術の開発とデバイス応用を進めており、ケミカルリフトオフ法による自立GaN基板の作製技術開発と高品質ZnO系薄膜技術を確立した。

Si結晶ウェハーを高温加圧加工することにより、自由な3次元的形状を有する高品質結晶ができることを発見し、高効率太陽電池システムやX線レンズへの応用を進めた。

・光FZ法によりβ-Ga2O3の高品位単結晶を作製し、その最表面近傍を直接窒化してGaNに転換し、青色・紫外発光材料GaNの薄膜を積層させる基板として応用する道を拓いた。

・水熱ZnOの高品位単結晶を作製し、自身の強い青色・紫外発光特性を応用するとともに、既存の青色・紫外発光材料GaNとの優れた格子整合性に着目し、GaN薄膜単結晶を積層させる基板に応用させる道を拓いた。

・次世代高性能半導体及び機能性材料として期待されているSiGeの大型単結晶の育成を進め、更に高性能節電材料及び機能素子の開発に向けた基礎的な構造と物性を明らかにした。

平成17年度

Si結晶ウェーハーを用いて結晶レンズ/ミラーが作製できることを発見し、高効率太陽電池システムやX線一点集光が可能な結晶レンズに適応できる可能性を示した。

・低速電子顕微鏡(LEEM)を用いて、有機半導体薄膜のデンドライト結晶の成長過程のその場観察に成功し、等価な6つのドメイン構造を利用して成長するメカニズムを発見した。

pZnOの正孔濃度を増し、紫外発光LEDの発光特性を向上した。準量産が可能な装置を導入し、LEDの産業化に関する民間との共同研究がスタートした。

・窒化物半導体GaNのエピタキシャル成長基板として通常用いられているサファイア上へのGaN成長機構を明らかにした。

・光FZ法に工夫をこらし、1インチ径を超えるβ-Ga203高品質単結晶を育成することに成功した。単結晶を方位切断し、その最表面近傍を直接窒化してGaNに転換し、青色・紫外発光材料GaNのホモエピタキシー成長用基板へ応用展開した。

ZnOは青色・紫外発光材料、GaN成膜の基板材料などとして注目される。高純度ZnO単結晶の水熱育成を継続推進した。単一及び複合アルカリミネラライザーの添加実験を通じ、当該化合物単結晶の高速度育成と高純度達成を両立できる添加剤を見出し、手法確立を前進させた。

・窒化物半導体GaNのシリコン表面上への成長を試み、半金属緩衝層を使用する事により高品質薄膜成長が可能となるメカニズムを解明した。

・成長界面への電場の印加により、液相―固相間の相平衡関係の操作により非調和融解物質の調和融解化が可能であるが、実際に必要な10,000V/cm以上の高電場が成長基板と融液の間に存在する電気二重層に生じていることを理論的解析及び実験から証明した。

Si単結晶引き上げに使用する石英るつぼの表面にBaを適量添加することにより、Si融液と石英るつぼが反応して生じる非晶質ブラウンリングの発生を抑えることに成功し、Si単結晶育成の歩留まり向上に大きく寄与した。

・次世代高性能半導体及び機能性材料として期待されているSiGeの高性能化に向けてその原子構造と電荷移動度等の基礎物性を明らかにした。

平成18年度

・温度安定性を期待できる窒化物半導体を光ファイバ通信用光源に適応すべく、レーザ構造を構成できる新材料InGaAlBNを提案し、その混和領域をシミュレーションによって明らかにした。

・高精度の結晶レンズの作製が可能な本格的な高温高圧加工装置を導入した。これを用いて高輝度の新機能X線装置としての結晶レンズの可能性を明らかにする。

ZnO/(MgZn)Oヘテロ接合界面に2次元電子ガスを制御性良く形成する技術を確立し、酸化物では初めての量子ホール効果の観測に成功した。

・成長界面への電場印加により、電気二重層に数万V/p以上の高電場が生じ、非調和融解物質の調和融解化が可能となるが、

電気二重層は融液と貴金属ルツボ壁の境界のみならず、成長固液界面にも存在することを確認した。これにより、電場による実際的な変換成長の可能性の見通しがついた。

・酸化物光学用結晶について固溶体の存在の有無と、結晶成長におけるイオン性溶質の固液間分配の関係について検討している。固溶体が存在しないLB4結晶では、成長中は常に固相液相ともに電荷中性が成立し、育成された結晶は、イオン性点欠陥が少なく、入射レーザー光の散乱が非常に小さい。

ZnO薄膜の極性制御技術を確立するとともに、周期的極性反転構造を作製し、2次非線形光学効果による波長変換を実現した。また、化学リフトオフにより革新的なGaN系高輝度LED作製プロセスを開発した。

・次世代高性能半導体及び機能性材料であるSiGeの高性能化に向けて物性制御の核となる電荷不純物の結晶固溶特性を明らかにした。また、Si結晶における転位−酸素不純物に対する強磁場効果を見出した。

 

K 炭素系材料、有機半導体等の電子機能材料の基礎物性と薄膜結晶成長原理の研究の解明に努める。

 

平成16年度

・有機半導体として応用が有望視されているペンタセンの高配向薄膜成長をシリコンとの接合が容易なビスマス薄膜を基板として使用することにより達成した。

・炭素系材料について、バルク物性研究とデバイス研究を平行して進めることにより総合的な観点から材料機能の開発を行った。

・分子性固体の基礎物性、特に電荷秩序についての研究を更に展開して非晶質系にも拡張し、DNAにおけるキャリアドーピングの可能性を明らかにした。

LEEMを用いて、有機半導体薄膜のデンドライト成長過程のその場観察に成功した。

・有機化合物伝導体のモットー転移近傍における相分離の機構解明を行った。

・量子素子の基礎となる金属錯体系単分子磁石において、異方性によらない磁気ヒステリシスの発生方法を開拓し、その原理を明らかにした。

平成17年度

・有機半導体の結晶成長において、成長基板の電子構造と結晶成長機構の相関メカニズムを明らかにした。

・炭素材料の物性、有機デバイスの動作原理の解明のため、外部から客員教授を招いて物性測定手法の強化を図った結果、画期的成果が得られた。

平成18年度

Si基板上のペンタセン・エピタキシャル層の結晶配向メカニズムとデンドライト成長メカニズムを明らかにした。

・フラーレンとCoナノ粒子が複合したグラニュー膜において巨大磁気抵抗効果を発見した。フラーレンがスピンエレクトロニクス分野で有用な材料であることを示唆する成果である。

・有機・炭素材料に関するプロジェクトが終了に伴い、次期の新プロジェクトに参画するとともに、研究室助手をオランダに4ヶ月間派遣し、有機デバイス研究の新展開を図った。